在日本朝鮮人文学芸術家同盟

「キョレ(同胞・はらから)童謡愛好会」創立10周年記念 2012コリア童謡コンサート

《朝鮮新報》 2012.11.21


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民族の情緒あふれる名曲に涙

〝懐かしい祖国の山河思い出した〟

「キョレ(同胞・はらから)童謡愛好会」創立10周年記念2012コリア童謡コンサート(主催=同愛好会)が19日、東京都文京区の文京シビックで行われ、約300人の同胞や日本市民が観覧した。2001年4月28日に創立された同会は、異国の地で生まれ育つ在日同胞の子どもたちに民族の情緒あふれる童謡を創作し、聴かせようと、同胞作詞家、作曲家の有志らを集め、祖国の童謡に加えオリジナルの童謡曲700曲を創作し、CD、作品集の制作など多岐にわたり活動してきた。

初のコンサート

同胞若手音楽グループ「パラン」

第1部は、同胞若手音楽グループ「パラン」によるピアノ4重奏「半月」で幕をあげた。

続いて、歌手の黄純和さん、徐明生さん、朴仁陽さん、李明花さんが、同胞によって創作された童謡「丸坊主の弟」「オンマありがとう」「黄色い傘赤い傘」などを独唱、重唱で歌い、会場は童謡独特の温かい雰囲気に包み込まれた。

今日まで約500曲の童謡を世に送り出してきた「キョレ童謡愛好会」代表の金児筆さんが作詞した「羽の生えた金魚」は、空を飛ぶ真っ赤なヘリコプターを見た金さんの5歳の孫娘が、「羽が生えた金魚が飛んでいる」と言った一言をきっかけに作った曲だという。

童謡の温かいメロディーが会場を包んだ

他にも、「チョゴリが大好き」「春風」「追憶の海」などが披露。帰国した両親からはじめて手紙が届いた喜びを表現した「春風」を作曲した李喆雨さんは、作詞を手掛けた詩人の故金学烈さんの友人。今年の8月に金さんが急死する1週間前に偶然、東京・神保町の本屋で会い、酒を飲み交わしたあの貴重な時間を過ごせたことを今でも感謝しているとコメントを残した。

一部の最後に舞台にあがったのは、「麻生童謡を歌う会」のメンバーたち。今回の舞台では日本と朝鮮を代表する童謡「赤とんぼ」「故郷の春」を披露した。1992年に結成された同会は今日まで、音楽女性合唱団としてインド、ネパール、南朝鮮の富川、瀋陽、昌原、トルコ、ザルツブルグ、ハンガリーなど世界各国を飛び回り、歌を披露しながら現地の人たちとの交流を深めてきた。世界には貧しくて教育を受けられない中でも、目をキラキラ輝かせる子どもたちがいた。そうした子どもたちと心を通わせる過程には、涙なしでは語れない経験もあったという。司会者にマイクを向けられた同会責任者の菅原敬子さんは、「日本には四季を表したすばらしい歌がたくさんある。歌い続けることで名曲を残していきたい」と話した。

ゲスト出演した「麻生童謡を歌う会」のメンバーたち

2部でも、「パラン」のBGMに合わせて朝鮮の名曲「白頭山」「セットンチョゴリ」「美しい国」や、創作童謡「オンマの手は薬の手」「こうろぎコロコロ」「カナタラの歌」などが披露された。最後に「故郷の空」を、観客も一緒に手拍子を打ちながら歌った。アンコールでは、「白頭山」を全員で歌い舞台の幕が下りた。公演は終始、和やかな雰囲気の中全26曲が披露された。

ある1世の同胞女性は、懐かしい童謡を聴いていると、幼い頃過ごした故郷の山河の風景が目に浮かぶようで、涙が止まらなかったと感慨深く話した。

足立顧問歌サークル「ポラムハーモニー」の責任者を務める李京子さん(75歳)は、子どもの頃聴く童謡はただの歌ではないという。友だち、親を思う気持ち、学校、故郷を愛する気持ちを自然と育む朝鮮の童謡ほどすばらしいものはないと笑みがこぼれる李さん。「これからは、私たちのサークルの発表会でも童謡をたくさん取り入れていきたい。そして、同会がさらに発展していくために微力ながら協力していきたいと思う」と話した。

フィナーレでは全員で「白頭山」を合唱した

同愛好会では初の童謡コンサートとなったが、在日同胞の歴史を振り返ってもこれまで例がなかったという。日本の植民地時代、異国の地で望郷の思いを込めて歌った祖国の童謡もいいが、在日同胞の今日の現状にあった童謡が必要との声が高まり、90年代初期に文芸同文学部に児童分科が作られた。さらに、より専門的に創作活動を展開しようと詩人、作曲家を集め、同愛好会が結成された。

同会代表の金児筆さんは、「ついにコンサートが実現しまるで夢を見ているようだ。情勢が厳しい今の時代だからこそ、日本で暮らす同胞たちが、祖国と民族を感じられるよう創作活動にいっそう力を入れ、普及していきたい」と力を込めて話した。

(文・尹梨奈、写真・盧琴順)

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