在日本朝鮮人文学芸術家同盟

朝鮮舞踊、“もっと多くの人に知ってほしい”/東京外国語大学朝鮮舞踊部10周年記念公演

《朝鮮新報》2021.02.18

目次

9作品を披露

朝鮮舞踊部の部員らと金英蘭舞踊研究所の関係者らの記念撮影

東京外国語大学(東外大)朝鮮舞踊部10周年記念公演が13日、目黒区中小企業センターホールで行われた。

2009年に東外大で創部された朝鮮舞踊部は19年に創部10周年を迎えた。当初は昨年4月に記念公演を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い延期が余儀なくされ、約1年を経て今回の開催に至った。

これまで朝鮮舞踊部は大学での練習に加え、金英蘭舞踊研究所に指導を仰ぎ、大学祭をはじめ、地域のイベントへの出演など活動の場を広げてきた。現在は東外大に在学する3人の在校生と同部OGらで練習に汗を流している。

東京外国語大学朝鮮舞踊部10周年記念公演が13日に行われた

「牙拍舞(アバッチュム)」で幕を開けた公演では、「剣の舞」「貝を採る少女」「チェンガンの舞」「鈴の舞」など、計9作品が披露された。観客たちは舞台上に広がる華麗で艶やかな踊りに魅了され、一つ一つの演目が終了するたびに会場内には大きな拍手が鳴り響いた。また公演中には出演者へのインタビューや舞踊部の10周年の歩みをまとめた映像が公開された。

この日の公演が最後の舞台となった東外大国際社会学部4年の稲井千紘さん(23)は「舞台に立つ楽しさを十分に味わうことができた」と晴れやかな表情で話しながら、「舞台を通じて朝鮮舞踊の魅力、存在意義をいろいろな人に伝えることはやりがいだった」と、4年間の部活動を感慨深く振り返った。

華麗な踊り、衣装に魅了され

公演では9作品が披露された

同部を創設した高仙雅さん(31)は「朝鮮舞踊をもっと多くの人に知ってもらいたかった」と、創設初期を振り返る。高さんは大学入学後に、舞踊系のサークルを回ってみたが、ピンとくるものがなく、「自分で作ってみよう」と、初級部の頃から大好きだった朝鮮舞踊部を立ち上げた。東外大に世界各地の多様な民俗舞踊部が創設されていたこともかのじょの決断を後押しした。

同部の立ち上げメンバーである安枝優花さん(30)は、高さんの思いに共感した1人だ。「新しく踊りを始めたい」という思いを抱いていた安枝さん。そんな時、同じ語科だった高さんから朝鮮舞踊部を立ち上げたいという話を聞いた。朝鮮舞踊を目にした安枝さんは「こんなに綺麗な踊りがあるなんて知らなかった」と、驚きと感動を覚え、入部を決意。高さんと安枝さんを含めた5人で活動をスタートさせた。

「可愛い衣装に魅了された」と入部のきっかけを話すのは上述の稲井千紘さん。現在、東外大に在学しながら同部に所属している学生は3人。一時は部員数も数十人あまり在籍していたが、近年は二桁を切っているのが現状だ。稲井さんは「部員数も少なく、少し寂しいけど、OGの先輩たちが一緒に活動に取り組んでくれるので心強い」と、高さんや安枝さんを中心とした同部を支えてくれるOGたちへの感謝の思いを伝えた。

公演後、出演者たちに声をかける朝鮮舞踊部指導員の梁聖美さん(写真右奥)

一方、安枝さんは卒業後、就職の関係で東京を離れたが、2年前の転職を機に東京に戻ると、少しの迷いもなく同部での活動を再開した。「ずっと朝鮮舞踊が忘れられなかった。踊りたくて常に体がウズウズしていた」(安枝さん)

新型コロナの影響もあり、紆余曲折を経て実現した今回の公演。すべての演目を披露した後、出演者らは達成感に満ちた表情を浮かべていた。

「感無量の一言。講師として最高のプレゼントを部員からもらいました」と話すのは、創部当初から同部を指導している梁聖美さん。梁さんは舞台上に広がる部員たちの踊りを観ながら「10年間、指導してきたことは間違っていなかった」と涙を浮かべた。

指導をはじめ、公演で利用する衣装や小道具の貸し出しなど、同部を陰ながらサポートしている金英蘭舞踊研究所の金英蘭所長は「部員たちの努力と情熱が詰まった素晴らしい舞台だった」としながら、「朝鮮舞踊をより多くの人々に広めていける可能性を感じた」と話した。

高さんは「もっと日本の人たちにも朝鮮舞踊のすばらしさを知ってもらい、親しみ踊る機会が増え、舞踊界を活性化できるよう励みたい」と熱く語った。

(全基一)

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