在日本朝鮮人文学芸術家同盟

〈留学同神奈川綜合文化公演〉民族に向き合う居場所“輝かせたい”

〈留学同神奈川綜合文化公演〉民族に向き合う居場所“輝かせたい”

《著す円新報》2023.04.04

演劇のワンシーン(写真はすべて朝鮮青年社撮影)

3月25日、多くの観客で盛況を博した「第一回留学同神奈川綜合文化公演 ~걸음 歩み~」。同公演は、留学同神奈川として、初の綜合文化公演であり、同盟員らが「集大成公演」と口をそろえるほどに、今後の活動に向けた決意みなぎるステージとなった。

公演の開催が決まったのは今から約1年前。最初のきっかけは、現在活動に精を出す同盟員たちが、「地域コミュニティーにおいて、留学同の存在やその活動があまり知られていない」という問題意識を共有したことだった。

「本来はおかしいことかもしれない。けど一方で、神奈川では日の目をみる活動ができていなかったのも事実。地域での認知を高め、ネットワークを強化した基盤のもとで、まだ繋がれていない多くの同胞学生たちとつながらなくてはと思った」

そう語るのは、2年前に留学同神奈川に赴任した兪在浩副委員長。近年、プライバシー保護の観点から個人情報の扱いが厳しくなり、同胞学生を探すのが一層困難となった。そんな状況のなか、留学同神奈川では、21年9月に神奈川大学支部、東海大学支部の2つの支部を再建し、約2年の間にそれぞれの活動を軌道にのせた。

月に1度の支部委員会と学習会を重ねる傍ら、常任委員らは議論の場で「いま公演をあげることが、留学同神奈川をさらに発展させる契機となる」と一致をみたという。「人数や定着している層が少ない、かつての留学同神奈川のイメージもまた一新したかった」(兪副委員長)。

そうした理由が影響し、今回舞台にあがった演目はすべて「留学同の活動を知ってもらう」ための内容で構成された。

プレゼンの様子

サムルノリに出演した東海大学支部の李大優さん(20)は、初級部のときにサムルノリを披露した経験を活かし、練習に率先して励んだ。

中級部まで朝鮮学校に通い日本の高校を卒業した李さん。高校卒業後に留学同のメンバーから活動の誘いが来た当初、1回だけ顔を出してみようという軽い気持ちでいたという。月に1、2回、留学同神奈川本部で開かれる学習会に参加するにつれ、日本の植民地支配の歴史を学び、日本学校に通う同胞学生たちにこの歴史を伝えていきたいと痛感するようになった。今回の公演を開催することについて聞かされたときも、出演したいと率直に思ったという。

10人でサムルノリを披露した本番の舞台では、「練習の成果を発揮していい演奏を披露できたし、民族音楽を演奏する楽しさを皆で感じることができた。民族打楽器を演奏しながら民族性を大事にしていきたいとも思った」と語った。

2021年春から本部で常任委員兼運動推進部長を務めた東海大学支部の金希玲さん(22)は、今回の公演を最後に、留学同を「卒業」した。

金さんは、公演準備が始まった当初を振り返りながら、「他の地域に比べて、神奈川は開催が遅かった。3月は次の年度を見据えた訪問活動が始まる忙しい時期で、正直不安もあった」と話す。それでも「これを機に、留学同神奈川の団結力を深めることは大きな経験になる。活動をさらにパワーアップさせたい」と、常任委員たちが心を一つにした。

他方で、総合演出を担当した金さんは、準備期間、演劇の脚本作りに苦戦したと話す。人生初の脚本作りに挑み、どうすれば同胞たちにうまく伝わるのかを研究し、徹夜しながら書いたという。

そんな中で、同胞たちからエールをもらい、留学同を応援してくれる人がたくさんいることを感じた金さん。「自分たちがしてきたことが神奈川同胞社会にしっかりと伝わっている」という実感は、留学同神奈川で今後もっといい活動ができるだろうという自信に変わった。

金さんは「これからは地域の朝青活動を頑張りたい。また、4月から看護師として働くので、医協の活動や、ウリハッキョの保健授業にも積極的に関わっていきたい」と抱負を口にした。

公演を終えた留学同神奈川の同盟員たち

公演タイトルの「걸음(歩み)」は、この地域の同盟員たちが「ゼロから一歩踏み出し活動に励んできた」ことで、結果的に本部や支部を再建した経験を、今後も留学同組織の発展に生かしたいという強い決意が込められている。

また現在、「한걸음 내디디자―一歩踏み出そう、留学同の日常化」をスローガンに掲げる留学同神奈川。初の綜合文化公演を終えて、兪在浩副委員長は、「自分も学生時代そうだったように、ウリマルや文化、歴史を知ると、朝鮮人として生きている『つもり』になってしまう。けれど『朝鮮人として生きる』というのは、民族の問題にいかに向き合えているかということだと思う。そしてそれを考えることのできる場所が留学同ではないか」と強調する。そのうえで「日頃、自分の民族と向き合う環境にいない同胞学生たちが、日常生活を送りながら必要だと思える組織を目指していきたい」として、同胞学生の居場所としての留学同組織を一層輝かせていきたいと語った。

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