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皆で考えた「私たちの民族教育」/留学同九州、初となる対外イベント開催
《朝鮮新報》2021.03.05
対外イベントのようす(写真はすべて留学同九州提供)
留学同九州による初の対外イベント「灯―民族教育闘争の本質を問う―」が2月21日、福岡県北九州市内の会場で行われた。新型コロナウイルス感染症拡大防止のため客席を制限し、オンライン配信を併用して行われた本イベント。オンラインを含む延べ150人が参加した。
今年は在日同胞による中等教育の実施から75周年を迎える節目の年。先代たちの闘いによってその歴史を繋いできた民族教育だが、昨今、高校無償化問題、地方自治体による補助金削減・停止に留まらず、幼保無償化問題、さらにコロナ禍における「学生支援緊急給付金」の対象から朝大生が除外されるなど、日本政府による民族教育に対する差別と弾圧はより露骨化している。
この日のイベントは、留学同九州の学生たちが、75年以上続いてきた民族教育闘争の「灯」の継承者として、闘争の本質を考え、自らの役割を確認しようと企画された。それと同時に、今後の民族教育擁護運動における主力として声を上げていく、そんな学生たちの決意が込められた。
サムルノリ
行事は2部構成で行われ、第一部では学生たちによるディスカッションが、第二部では、サムルノリ、朝鮮語でのスピーチ、出演者全員による合唱など文化公演が披露された。第二部の始めには、メンバーたちのインタビュー映像も放映された。
留学同がすべき闘いとは
第一部のディスカッション
第1部のディスカッションには、北九州市立大学4年の兪優壱さん、福岡大学3年の金美希さんが登壇。北九州市立大学1年の周康秀さんが進行役を務めた。
はじめに民族教育の歴史を映像やパワーポイントを通して確認した後、幼稚園から高校まで朝鮮学校に通った金さん、周さんと、幼少期から日本学校に通い、大学時代に留学同と出会ったことで、初めて朝鮮の文化や歴史に触れたという兪さんが「私たちの民族教育」をテーマに語り合った。
「在日朝鮮人が民族教育を受けないこと、民族に触れる機会のないことはいいことなのか?」「民族性の喪失、同化というけれど、具体的にそれはどういう状態のことをいうのだろう?」という問題意識のもと、登壇者たちは、高校時代の経験や留学同に出会う前と後での気持ちの変化などについて率直に語り合った。
そして「私たちの民族教育」についてひも解いていった。
「私たち留学同がすべき民族教育闘争は、今ある朝鮮学校を守る運動に寄与すること、また、今まで民族的要素と出会ったことのなかった同胞学生や、民族教育を受けたけれど日本社会にまみれてしまった同胞学生たちの民族的アイデンティティ―を回復させ、取り戻していくこと。そのために一人でも多くの在日朝鮮人学生たちと出会い、話し、学ぶこと、その学生たちと共に声を上げることだと考えます」
留学同活動がくれた気づき
対外イベントに出演したメンバー
「最後だし、思い出作りでやってみようかな。当初はこんな気持ちで練習に出始めた」。対外イベントを終えて、兪優壱さんは少しはにかみながらこう話した。今まで留学同活動の誘いを受けても「気が向いたときにしか行かなかった」という兪さん。しかしいざ練習を始めてみると、日増しに問題意識や責任感が芽生えていったという。
「準備の過程で、他の出演メンバーたちと各々のバックボーンや経験についてたくさん共有した。とくに朝鮮学校に通ったことのない自分にとって、朝鮮学校出身の皆が続けてきた闘いや葛藤は、考えさせられることが多かった」
4月から社会人となる兪さんは、「大事なのはこれから。日本社会で朝鮮人としてどう生きるか。後輩たちと切磋琢磨しながら常に自分に問いかけて生きていきたい」と話した。
一方、北九州市立大学3年生の姜珠美さんは「一人じゃなく皆で行事を作り上げられた。とてもやりがいを感じた」と話す。留学同と出会って約1年。姜さんは今回、第2部で披露された朝鮮語で行うスピーチの舞台に出演し、「本名宣言」をするに至った。「これまで私は、いかに在日朝鮮人であること隠すことができるだろうかと考えて生きてきました。留学同と出会って、今まで知らなかった自分の民族や在日朝鮮人の歴史、ウリマルと文化に触れ、そして在日朝鮮人の友だちとはじめて出会いました。…怖さはありますが、それよりも『自分』を発信していくことの方が大事だと気づきました。これからは民族名を通して、日本社会の中に自分の存在を伝えてきたいです」(姜さんのスピーチから)。
姜さんは、自身を発信することの重要性を教えてくれた留学同活動の意義について述べながら、「これからも学生たちそれぞれが感じてきたこと、考えてきたことを深く話し合う場を作って行きたい」と意気込みを語った。
今回のイベントは、新型コロナウイルス感染症の拡大により中止を余儀なくされた昨年度のイベントを継承して行われたもの。金美希さんは思い通りに活動できなかった悔しさを吐露しながらも、「集まる機会は少なかったけれど、行事をきっかけに皆のルーツについてたくさん話を聞く過程でいろんな気づきを得られた。経験も、考え方も、性格もそれぞれ違う。だから、朝鮮学校に通った自分が当たり前だと思うことも当たり前ではない。無責任な発言はできない、そう気が引き締まる時間だった」と述べた。そして「留学同九州の輪をさらに広げていきたい。この経験を来年度の活動に必ずつなげていきたい」と抱負を述べた。
(李鳳仁)