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在日同胞画家らが受賞/第28回極美本展
【朝鮮新報》2022.10.04
第28回極美本展(主催=一般社団法人新極美術協会、東京都美術館、9月 28日~10月5日)の授賞式が1日、東京都美術館で行われ、5人の在日同胞画家らが「極美審査委員特別賞」などを受賞した。
授賞式では、盧英男さんの油彩画「引っ張る」に「極美審査委員特別賞」、金任鎬さんの油彩画「街風景」に「ミャンマー大使賞」、夫正鵬さんの油彩画「初心」に「ミューズ賞」、金聖蘭さんの水彩画「14歳の日にⅠ」と張留美さんの油彩画「愛に花咲く―無窮花」に「シバヤマ賞」がそれぞれ授与された。朝鮮の「人民芸術家」で同協会の副会長である朴正文画家の司会で受賞者が発表された。
極美本展は、自由、平等、博愛の理念のもと、日本や東アジア、アフリカなどさまざまな国と地域の作家たちの自由な表現・独創性を高め、新鮮な芸術を極めようとする人材の開発および新人の育成を目的としている。その成果を世の中に発信し、芸術文化の発展に寄与するとともに、アジア諸国の芸術家との交流を促進している。近年、在日朝鮮人画家や朝鮮学校の美術教員らの出品も多く、受賞者も多数にのぼっている。
受賞者らの中で、盧英男さん(63)は初出展の受賞となった。盧さんは過去、朝鮮新報社経営局のデザイナーとして長きにわたり活躍。その後は文芸同東京の美術部長も務めた。現在も「クリム展」出展をはじめ、文芸同活動に励んでいる。
受賞作「引っ張る」は、P120(1940㎜×1120㎜)の大型の油彩画で、多くの来場者の足を止め、惹き付けていた。
盧さんは「決して運動会の綱引きではない」と冗談交じりで述べた後、作品について説明してくれた。
絵の中では「青年たち」が右から左へ、「何か」を力強く引っ張っている。ヒントとなるのは背景を彩るキューブだ。キューブは、それぞれ過去、現在、未来を表している。画面右側のキューブには重みのある色を合わせ、記憶の奥に積み重ねられていく「過去」を表現した。中央には、キューブたちの他、「今」の象徴として新聞記事のコラージュをあしらい「現在」を表した。そして左側には、まだ見ぬ「未来」として、淡くも明るい色合いのキューブを描いた。
では、青年たちの群像は何を引っ張っているのか。この問いに盧さんは「それは見る人たちが決めればいい」と清々しく語る。「個々人の夢や願望でもいい。最近ではコロナ終息後の世界ともいえるだろう。そして祖国統一の未来に思いを馳せてくれてもいい」と、普遍的な意味を込めたという。「人は誰しも、いろんなものを背負っている。それでも前へ、前へ、進んでいく。今を生きる人たちへの応援歌になれば」。
盧さんが常に大切にしていることは「個性、オリジナリティーの追及」で、「見る側と対話できる、問題意識を投げかけられるメッセージ性のある作品制作」に一貫してこだわっている。同じ受賞者で盧さんと長年、ともに美術活動を行ってきた金任鎬さん(文芸同東京委員長)は「盧氏の作品はひときわ個性的で、メッセージ性がはっきりしている。何を主張したいのか分りやすい表現が特徴だ」と評した。
盧さんは「公募展に出展するのはこの年になって初めて。日本の人たちとともに発表する場は新鮮でとても面白い」と話した。今後は年末に予定している文芸同東京美術部展「クリム展」にむけて、創作活動に励んでいくという。
同展の「アジアの子どもの絵」部門には、朝鮮学生美術展―東京展の企画展示作品「空にとどける みんなのねがい」も展示された。作品は朝鮮学校の子どもたち、北南朝鮮と日本、中国の子どもたちによる合同作品で、朝鮮半島の統一や東アジアの平和を願い、子どもたちが絵で出会い、絵で友情を育くむ絵画交流の作品である。
展示場の壁一面を大きく鮮やかに彩った合同作品を、観覧者たちは目を細めて観覧し、写真を撮るなどしながら楽しんでいた。