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福岡朝鮮歌舞団創立55周年記念公演
喜びと感謝の祝宴/福岡朝鮮歌舞団創立55周年記念公演
【朝鮮新報》2021.12.23
「つながり」が生んだ多彩な演目
福岡朝鮮歌舞団創立55周年記念公演「잔치-JANCHI」(18日、北九州芸術劇場)では、歌舞団とゲストたちが全18演目を披露。異国の地で朝鮮の伝統芸術を守りながら、多方面で関わりをつないできた福岡朝鮮歌舞団ならではの華やかステージで創立55周年を盛大に祝い、455人の観客たちを魅了した。
福岡朝鮮歌舞団は1966年5月「福岡朝鮮文宣隊」として発足し、同年9月に福岡朝鮮歌舞団に改称した。以降、同胞たちの大きな愛情と期待を受けながら九州各地や山口を中心に活動を展開してきた。また近年では対外事業にも力を入れ、さまざまな団体との交流公演も活発に行いながら、朝鮮芸術の魅力を内外に広く発信している。
19年の「黎明」公演以来、福岡朝鮮歌舞団2年ぶりの自主公演。名称の「잔치(朝鮮語で宴、祝宴の意)」には、同胞たちの宴の場を彩ってきた歌舞団の創立55周年を盛大に祝うとともに、歌舞団を支え応援してくれるすべての人たちを感謝の宴に招待しようという団員たちの思いが込められた。
この日の公演は北九州市が推進する「東アジア文化都市2020―21」のパートナーシップ事業として採択され、市の後援のもと開催された。開演前には北九州市の北橋健治市長があいさつに立ち、歌舞団創立55周年に対する祝辞を述べながら「どんな状況にあろうとも時代を超えて、国境を越えてお互いに心から感動を共有できる。今後もみなさまの音楽、芸術がますます繁栄されることを願っている」と話した。
2部構成となった公演では、歌舞団と7組のゲスト、総勢105人の出演者が舞台にあがり、55周年の祝宴にふさわしい多彩な演目が披露された。
公演最初の演目を飾ったのは「祝福のアリラン」。団員たちのチャンゴの音色とゲストアーティストたちのパフォーマンスがひとつとなり、55周年を迎えた喜びと感謝の気持ちを表現。宴の幕開けを高らかに告げた。
第1部では、金潤基副団長と徐美香団員による朝鮮民謡「牡丹峰」、金妙穂団長と朴梨銀団員による朝鮮舞踊「豊年鳥」など、同胞たちに広く親しまれてきた朝鮮の伝統作品につづき、北九州少年合唱隊、北九州市小倉少年少女合唱団、和太鼓集団・志免飛龍太鼓のメンバーたちが舞台にあがり、歌や演奏を披露。また朝鮮の民謡「뱃노래」と日本のソーラン節をコラボさせたオリジナル作品「ペンノレソーラン」の迫力あるステージも繰り広げられた。
演目の合間には、歌舞団が歩んできた55年の道のりを振り返る映像が上映されたほか、団員とゲストが軽快なトークを繰り広げ、客席の笑いを誘った。
第2部はいっそう国際色豊かなステージに。九州華僑華人文学藝術家連合會による笛・二胡・楊琴の演奏「花好月圓」や劇団アフリカによるギニアの伝統楽器演奏と踊りが祝宴のムードをいっそう盛り立てた一方、両団体と歌舞団によるコラボ作品「茉莉花」や「アフリ歌舞」が国際親善と友好の温かな雰囲気を演出した。また、パフォーマー・ちゃんへん.さんによる圧巻のジャグリングショーに、観客たちの視線は釘付けとなった。
朝鮮民謡「アリラン」と日本の民謡「赤とんぼ」、そして「アメイジング・グレイス」を掛け合わせた「はじまり」を4人の団員たちと九州中高の生徒、日本の子どもたちで力強く歌い上げた後、最後に全出演者たちが舞台にあがり、歌舞団創立55周年を記念し団員が作詞・作曲したオリジナルソング「잔치・JANCHI」を披露。出演者たちが満面の笑顔を浮かべながらステージで交じりあい、軽快なリズムに合わせてともに歌い踊った。
フィナーレではステージと客席が一体となって踊りの輪を広げ、会場のムードは最高潮に達した。
公演終了後、客席から万雷の拍手と声援が注がれる中、カーテンコールのあいさつに立った金妙穂団長は目に涙を浮かべながら、観客たちに向け感謝と決意の言葉を述べた。
「55年という長い間、福岡朝鮮歌舞団が異国の地で朝鮮の歌と踊りを守ってこられたのは同胞たちがいたからです。同胞たちがいてこそ、歌舞団が存在します。そして芸術がつないでくれたたくさんの人たちとの縁こそが、私たちの一番の宝物です。これからも民族の誇りを胸に、たくさんの仲間たちと尊重しあい、だれもが自分らしく笑顔で生きられる未来を作っていくべく、ますます精進してきます」
「今まで見た中で最高のステージのひとつだった」
公演後、総聯小倉支部・足立分会の李成根分会長(68)は感激したようすでこのように話した。「朝鮮の民謡や舞踊はもちろん、さまざまな団体とのコラボ作品も素晴らしかった。友好と親善のムードであふれる公演だったが、その中心に我われの歌舞団がいることがうれしい」。
会場には、歌舞団55年の歴史と伝統を守ってきた前団員たちの姿もあった。1979年~85年に団員として活躍した李福実さん(62)は「大変な状況の中でも情熱を傾け、歌舞団の伝統と朝鮮芸術を守っている団員たちが本当に誇らしい」と声を震わせた。
現在、県内で婚礼プロデュースやチョゴリ制作などを行うオフィス・テンギの代表を務め、歌舞団に公演衣装などを提供し活動を支えている李さん。「歌舞団は我われ在日同胞の誇り。今後も後輩たちがいっそう輝けるよう、自分にできることをしていきたい」と話した。
この日、同胞のみならず、多くの日本市民らも歌舞団から大きな力を得ていた。
長年、歌舞団のファンだという鞍手町在住の吉永公子さん(52)は「最初から最後まですべてが素晴らしかった。日本でチョゴリを着て、堂々と朝鮮と歌と踊りを披露する団員たちの姿にいつも感動をもらい、在日コリアンのパワーを感じている」とし「鞍手町でも歌舞団公演を行っていて、団員たちと交流を深めている。これからも歌舞団を熱烈に応援していきたい」と笑顔をみせた。
(丁用根)
〈福岡朝鮮歌舞団創立55周年記念公演〉団員たちの思い
福岡朝鮮歌舞団創立55周年記念公演「잔치-JANCHI」(18日、北九州芸術劇場)を成功させた4人の団員たちは、55年の歴史を紡いできた先代たちへの敬意と同胞たちや日本市民たちへの感謝、そして歌舞団としての誇りを胸に舞台で華麗に舞い、力強い歌声を披露した。
舞踊手・朴梨銀団員(24)と歌手・徐美香団員(24)は、コロナ禍においても変わらぬ愛情と声援を送ってくれた同胞や日本市民たちへの恩返しの気持ちで舞台に立ったという。「自分たちの姿で観客たちに少しでも勇気や力を与えられたら」(朴梨銀団員)、「幕があがった瞬間から大きな拍手が聞こえ、顔なじみの観客たちの笑顔が見えて胸が熱くなった」(徐美香団員)。
ともにことしで入団4年目を迎えた両団員は公演当日や準備期間を通じて「朝鮮歌舞団、そして朝鮮の文化芸術が持つ魅力と可能性は無限大であるということ」(徐団員)を強く感じたと話す。そして「同胞たちはもちろん、より多くの人たちと手を携えつながりあいながら、歌や踊りで在日朝鮮人の存在をアピールしていきたい」(朴団員)と決意を新たにした。
今回、団員たちは自分たちがステージに立つのみならず、照明、音響をはじめとした舞台演出、オンラインでの配信やチラシ、映像制作などの宣伝広報にいたるまで、それぞれが役割を担いながら、舞台全般のプロデュースも担った。
今年から副団長を務める金潤基団員(32)は公演の舞台監督を担当。「コロナ禍でいろいろな制限がある中、団員とゲスト、スタッフと観客たちが一体となって共に楽しみながら公演を成功させ、歌舞団の55周年を盛大に祝うことができたのが何よりもうれしい」とし、「今後も歌舞団団員としての誇りと自覚を胸に、新しいことに積極的にチャレンジをしながら自分たちの可能性を広げていきたい。そして同胞たちから変わらずに愛され、幅広く支持される集団にしていきたい」と話した。
金妙穂団長(36)は「歌舞団が55年を迎えることができたのは歴代の団員たちのみならず、同胞たちや日本市民などいろんな人たちの支えがあってこそだということを改めて感じた。今後も豊かな同胞社会のため、祖国統一のため、朝・日友好親善のために努力し、幸せや希望を感じてもらえるよう頑張りたい」と力を込めた。(根)