在日本朝鮮人文学芸術家同盟

〈民族教育と朝鮮舞踊20〉-日本体育大学「体育研究発表実演会」への参加-

《朝鮮新報》2022.10.05

〈民族教育と朝鮮舞踊20〉-日本体育大学「体育研究発表実演会」への参加-

朝大舞踊部「横浜アリーナ」に舞う

朝大・日体大スポーツ交流協定調印式(左2番目から―朴英植理事長、張炳泰学長、谷釜了正学長、松浪健四郎理事長、馳浩議員。役職はすべて当時、2013年5月16日)

朝鮮大学校舞踊部は、横浜アリーナ(以下、横アリ)で行われる日本体育大学(日体大)の「体育研究発表実演会」に3度(2015年、19年、21年)に渡ってゲスト出演し、朝鮮舞踊を披露してきた。

1964年から行われている同「実演会」は2年に一度、また地方でも行われている日体大の一大イベントである。内外の注目を集め日々進化する「集団行動」や、日体大深沢寮に伝わる応援スタイル「エッサッサ」は有名である。毎回1万人以上の観客を誇るこの「実演会」では、チアリーダー、伝統芸能、武道、新体操、救急医療、体操競技、レスリング、相撲、体操、陸上競技、トランポリン、ハンドボール、ダンスなどが披露され、付属高等学校も参加する。2015年以降、同「実演会」に参加した外部団体は、北京体育大学の太極拳とダンスのみである。そのような場に、朝大舞踊部は3度も招待されている。

「第57回体育研究発表実演会」で「農楽舞」を披露した朝大生たち(後列中央左―韓東成学長、右―洪南基理事長)

日体大は、2012年に朝鮮体育大学とスポーツ交流協定を結び、4次(2012年、13年、15年、19年)にわたる朝鮮民主主義人民共和国遠征を行った。サッカー、バスケットボール、レスリング、柔道など「純然たるスポーツを通して国際社会の平和に寄与すべし」という日体大の建学精神に基づく使命を果たすためのものであった。そして、13年の朝大と日体大とのスポーツ交流協定締結後は、松浪健四郎理事長による2度(13年、19年)の訪朝報告会や、親善試合、学園祭へのゲスト出演など、さまざまな機会に両大学の親睦が深められてきた。

昨年は、東京五輪で訪日する予定だった朝鮮選手団の事前合宿や大会期間の練習場として、日体大の施設が提供されることも決まっていた。選手団の不参加で実現には至らなかったが、もし実現していたら、朝鮮選手団と日体大、朝大との夢のような交流もできたであろう。一方で、日本政府がコロナ禍で困窮する大学生を救済する目的で創設した「学生支援緊急給付金」の対象から朝大生が除外された際には、抗議声明に多くの日体大教職員が賛同してくれた。また、朝大創立65周年学園祭では、同理事長、学長、五輪メダリストからのビデオメッセージが紹介されるなど、コロナ禍の中においても良好な関係が維持されてきた。

第53回プログラムのカレンダー

日体大は11月に「日体フェスティバル」と題する学園祭を、東京・世田谷キャンパスと横浜・健志台キャンパスとで隔年で行っており、初めて朝大舞踊部が招かれたのは13年、健志台キャンパスでの学園祭であった。かねてから松浪理事長は朝鮮舞踊の素晴らしさや、その芸術性への見識も高く、様々な交流の一環として朝大舞踊部のゲスト出演が決まった。その時は、「チャンゴチュム」と「チェンガンの舞」(26人)を披露した。

大きな体育館フロアでの公演で、さらには理事長、学長はじめ日体大役員の方たちの目前での演舞に私はハラハラしていたが、役員の中には私たちの舞踊を見て涙ぐむ方もいた。翌年(14年)には、世田谷キャンパスでの「日体フェスティバル2014」のオープニングセレモニーで「剣の舞」と「手鼓の踊り」を披露。そして記念すべき15年11月11、12日の2日間、日体大創立125周年のイベントの一つである「実演会」に出演し、2万人以上の観客の前で朝鮮舞踊「チャンゴとサンモ」(25人)を披露した。「チャンゴチュム」は松浪理事長のリクエストであった。

「第57回体育研究発表実演会」での「農楽舞」演舞模様

四方に向けた巨大スクリーンに「朝鮮民族舞踊」―朝鮮大学校―と映し出され、司会者の紹介が始まった瞬間の感動は今も忘れられない。舞踊部の学生たちは、横アリの通路の壁に記された、有名アーティストやアイドル、スポーツ選手たちの名前を見つけてはしゃいでいた。体操のひろみちお兄さんやチアリーダーの日体大生たちと記念撮影をしたり、フィナーレでは一緒に踊ったりもした。この一大イベントで朝鮮舞踊をここぞとばかりに万人に見せ魅了できたことをとても誇らしく思っていた。第53回のプログラムはカレンダーとして制作された(「朝鮮民族舞踊」朝鮮大学校は17年1月)。その後も、17年11月の健志台キャンパスでの学園祭では「豊年の歓び」(52人)を、18年11月の世田谷キャンパスでの学園祭では「チェンガンの舞」(10人)を披露した。

19年11月13日、2度目の横アリ公演となる第57回の「実演会」では、舞踊部(70人)そして「風物ノリ」と「キン(長い)サンモ」を担当する学生ら15人を含めた総勢85人で、祖国の国立交響楽団演奏による「青山里に豊年がきた」に合わせた大群舞「農楽舞」を披露、素晴らしい音楽が響く中での農楽は圧巻であった。21年11月7日の第58回「実演会」には、「プㇰチュム(太鼓の舞)」(16人)を披露。一糸乱れぬ華麗な踊りと軽快でリズミカルなプㇰの音色に、観客は釘付けとなった。この「実演会」には恒例の「集団行動」や、日体大名物の「エッサッサ」に加え東京オリンピック・パラリンピックのメダリストらも登場し、会場は大いに沸いた。

「第58回体育研究発表実演会」「プㇰチュム」

どのような社会情勢の中でも「スポーツによる国際平和実現のために果敢に行動する日体大」の姿勢は、第4回朝鮮遠征報告会(19年2月18日、朝大講堂)での松浪理事長の講演「私と朝鮮」でもうかがえた。大阪泉佐野市の高校時代、柔道部での朝鮮人監督との出会い、帝京高校教員時代に朝鮮高校に対する差別を機に教員を辞職した話など、差別を嫌い、国交がなくても、政治体制が違っていても純粋にスポーツを基軸にその役割を果たさんとする確固たる哲学に深い感銘を受けた。スポーツを通して国際社会の平和に寄与すべし、何事も先駆けを重んじることをモットーとする松浪理事長の信念は、日体大の校風と完全に軌を一にしていた。

朝大舞踊部はこれからも変わりなく朝・日両国と両大学の友好親善のため、民族の誇りである朝鮮民族舞踊を披露していくであろう。

朴貞順(朝鮮大学校舞踊教育研究室室長)

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