在日本朝鮮文学芸術家同盟

〈人・サラム・HUMAN〉在日朝鮮人美術史研究者/白凛さん(41)

《朝鮮新報》2021.03.06

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 “私だからできること”を究めて

白凛さん

朝大師範教育学部(当時)美術科、東京藝大美術学部を経て、東大大学院へ。昨年3月に博士号を取得した。現在、2016年に有志らとともに設立した一般社団法人在日コリアン美術作品保存協会(通称、ZAHPA)の代表理事を務める。

白さんが在日朝鮮人美術史研究をはじめたきっかけには、多彩な学問領域に対応する総合大学という朝大の環境下、学友たちと共に学び過ごす過程で「自身にとって在日朝鮮人とは何なのか」「情熱的に美術をする人はどういう人なのか」という2つの疑問点が重なったこと、そして朝大卒業を控えた99年、京都で開催された「アルン展」で在日1世の作品に出逢ったことにあった。「在日朝鮮人美術史を研究し歴史をまとめる人が必要になる」。そう話した恩師・李鏞勲さん(朝大美術科教授・文芸同中央美術部長)のことばは、当時進路に悩む白さんの背中を押してくれた。

祖国が解放した1945年から「これまで手薄になっていた」50年代を射程に、「日本に生きる朝鮮人にとって『民族美術』とは何か」を探求した在日朝鮮人美術家に着目した白さん。研究を通じ、1世美術家による「民族美術」を究める営みが「境遇を同じくする在日たちに祖国があることを希望をもって伝える」ことであると在日朝鮮人美術史の一端を明らかにした。

今年に入り自身が翻訳した書籍「平壌美術(ピョンヤン・アート)」(ムン・ボムガン著、青土社、2021年2月)が発売。博論を基にした単行本の発売も控えている。異国の地で生を紡いでいくうえで重要な転換期ともいえる時代の在日朝鮮人美術史を研究すること―。白さんはその原動力を「美術は単純には語れないもの。在日朝鮮人美術をどのように発掘し、どのように語るのかとなったとき、ウリハッキョで育ってきた私だからこそできることがある」と語った。

(賢)

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