在日本朝鮮文学芸術家同盟

朝高で叶える夢/神戸朝高生が国際フルートコンクール優勝

(朝鮮新報)2019.05.31

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国内最高クラスの大会で快挙

表彰状と盾を持つ成希蘭さん

5月2~6日にかけて滋賀県高島市で行われた「第24回びわ湖国際フルートコンクール」のジュニア部門で、神戸朝高吹奏楽部の成希蘭さん(3年)が優勝した。大会には日本各地の高校生のみならず、海外からも参加者が集まる。フルートに詳しい同校吹奏楽部卒業生は、同コンクールについて「高校生以下が参加するフルートのコンクールでは『全日本学生音楽コンクール』と共に国内最高峰のコンクールのひとつ」と評し、そこで優勝したことで成さんは「日本のフルート界からも将来を嘱望される存在になった」と賛辞を惜しまなかった。

成さんがフルートを本格的に始めたのは西播初中初級部6年生の時。ともに神戸朝高吹奏楽部出身の両親が家に子ども用のフルートを置いていたことや、初級部に吹奏楽部ができたことがきっかけだった。

本格的にフルートのレッスンを始め、中級部になってからはコンクールでも少しずつ結果を残せるようになったが、高級部への進学に当たり岐路にぶつかった。音楽を本格的に学ぶために、音楽で有名な日本の高校に行くか迷ったのだという。その後の人生にも影響する重要な選択だったが、成さんが選んだのは、ウリハッキョだった。

将来のために音楽以外も学びたいという考え、そして「やっぱりウリハッキョが良い」との思いからだった。「小さい頃からの友だちと同じ高校に行きたかったし、この環境で生活したかった。朝鮮語を使わなくなって忘れていくのも嫌だった」(成さん)。

「神戸朝高の成希蘭でなければ意味がない」という思いは、両親も同じだったという。神戸朝高への入学を決め、吹奏楽部の練習や大会に可能な限り参加しながらコンクールを目指すことになった。

刺激を与えあい

成さんは今でも神戸朝高の吹奏楽部の練習に参加しながら、個人レッスンを受けている。コンクールの前には平日4時間、休日は朝10時から夜8時30分まで猛練習を積む。一方で、「一人で練習している時に、部員たちが部室で撮った写真を見たりすると、寂しくなることもある」という。それでも練習に打ち込めるのは、いつも支えてくれる家族、そして応援してくれる友人、教員たちのおかげだと話す。

「同じ部員たちが練習をがんばっているから、自分もがんばらなければいけない。練習でみんなが前に進んでいる時、自分は個人練習をしている。だからこそみんなに遅れないくらいの技術が必要だし、もっと頑張らなければ」。

また、学校生活での経験が演奏の支えにもなった。高2で参加した夏期実践活動では、同胞高齢者の前でフルートを披露した。成さんが吹いた「リムジン河」を聴いた同胞は大きな拍手を送り、中には涙を流す人もいたという。「こんな自分の演奏で涙を流してくれる人がいることが嬉しくて、今でも忘れられない。何かを伝えられたという経験が今でも大きな力になっている」と振り返る。

神戸朝高吹奏楽部の一員として練習する成さん(左端)

吹奏楽部にとっても、成さんの存在は大きな刺激だ。練習に参加した時にはその技術や姿勢を学ぶ一方、コンクールの優勝の報せを聞いた部員たちは大喜びしたという。「同時に『今度は自分たち』とも考えた」と吹奏楽部部長の孫未奈さん(3年)。「同じ部活のメンバーとして、もっとできることがあるんじゃないかと。つながっているからそう感じることができる」と刺激を受けた様子だった。成さんは吹奏楽部として重要な大会にも出場しており、今年の在日朝鮮学生中央芸術コンクールにも参加する予定だという。

生徒たちの希望に

今回のコンクール優勝は、そのような学校生活や部活動と個人レッスンを両立しながら成し遂げた快挙と言える。高級部3年の学年主任で、吹奏楽部顧問の千守日教員は、学校生活にも誠実な成さんの人柄に言及しながら「朝鮮学校に通い、吹奏楽部に所属しながらコンクールを目指すことを自分自身で決め、その中で成果を収めたことに大きな価値がある」とし、「同じような目標を持つ生徒たちの希望になれば」と期待を込めた。

成さんは今回の優勝を振り返り「優勝して舞台に上がり、真っ先に見えたのは母が泣いている姿で、父も隣で喜んでくれていた。結果発表の後には友だちもお祝いしてくれて、直接関係のない人たちも祝福してくれた。自分の成果で周りの多くの人たちが喜んでくれたのがうれしくて、本当にがんばってきてよかったと思った」と話す。

9月には「一番の目標」だという「全日本学生音楽コンクール」の予選が始まる。成さんは同コンクールの全国大会優勝を目標にしながら、将来は「フルートを持って何かをしていきたい」という。成さんの個人レッスンを受け持つ金豊水さん(47)は「聴く人を惹きつける深い音色、完璧なテクニック、豊かな表現力、どの要素を取ってもトップレベル。向上心も強く、世界的フルーティストになる日も遠くない」と太鼓判を押す。

成さんは将来を見据えながら、「自分が神戸朝高生として成果を得ると、学校の名前も目立つし、日本の音楽専門の学校に行かなくてもできるというメッセージにもなる。それでウリハッキョに興味を持ってくれる人がいたらうれしいし、そのことをこれからも忘れずに練習していきたい」と決意を述べた。その上で神戸朝高生、吹奏楽部員としての生活を振り返り「神戸朝高に通って本当に良かった」と笑顔を見せてくれた。

(金孝俊)

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