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〈民族教育と朝鮮舞踊9〉民族の誇り―国宝級の「朝鮮民族舞踊基本」
〈民族教育と朝鮮舞踊9〉民族の誇り―国宝級の「朝鮮民族舞踊基本」
《朝鮮新報》2021.10.10
『朝鮮民族舞踊基本』(1)
朝鮮舞踊の特性と技法を体系的に集大成
朝鮮民主主義人民共和国民族遺産保護指導課は2017年10月23日、「朝鮮民族舞踊基本」を「国家非物質文化遺産第72号」として登録した。
崔承喜著『朝鮮民族舞踊基本』は1957年10月29日に完成、58年に出版された。当時の「朝鮮民報」(58・6・26)は、その知らせをいち早く「祖国書籍各種入荷『正しい舞踊法解説』」として報じ、60年3月11日からは4回にわたり「民族舞踊基本練習法」を挿絵入りで紹介した。その後、書籍と映画フィルムが日本にも送られて来て、帰国船内で祖国の舞踊家から直接的な伝授も行われた。
解放後、1世舞踊家によって民族舞踊の普及が行われてきたが、60年代初期にはそのほとんどが帰国した。途方に暮れていた在日舞踊家と学生たちに、祖国で初めて作られた朝鮮舞踊教本が普及されたことは、とても意義深く幸運なことであった。
「朝鮮民報」1960.3.11号
「朝鮮民族舞踊基本」は46年10月5日、祖国解放後初めて設けられた舞踊研究所の創立記念公演での、「朝鮮サラムは、あくまでもウリナラの固有な民族舞踊を基本にし、舞踊教育においても民族舞踊教育を中心として行わなければならない」との金日成主席の教えに沿って創られた。完成後、主席は民族の誇りであり、国宝だと高く評価された。そして、国家的プロジェクトとして1カ月にわたる朝鮮民族舞踊基本講習が行われ、書籍出版と映画撮影がなされた。
『朝鮮民族舞踊基本』の(1)(58・3・15、朝鮮芸術出版社)には、1:リプチュム(立舞):予備動作8と基本動作(男女動作11、女子動作4、男子動作7)、2:プチェチュム(扇の舞)、3:タㇽチュム(仮面舞)、4:スゴンチュム(手巾の舞)、5:ソゴチュム(小鼓舞)、6:カㇽチュム(剣舞)に朝鮮チャンダンと基本動作の伴奏楽譜が収録されている。(2)(58・9・30、朝鮮芸術社)には、7:ハンサㇺチュム(汗杉の舞)、8:プㇰチュム(太鼓の舞)、9:パラチュム、10:サンモチュム(象毛の踊り)、11:チャンゴンム(長剣舞)、12:チャンゴチュム(長鼓の舞)と伴奏の基本楽譜が収録されている。
これによって著者・崔承喜は舞踊生活30周年に際して、朝鮮チュムの発掘、体験、創造の総括としての「朝鮮民族舞踊学」を創出・確立した。まさに朝鮮民族舞踊の基礎から豊富な民族固有の舞踊律動と技法、小道具を用いた動作にいたるまで、朝鮮舞踊の特徴と表現の豊かさを体系的で分かりやすく整理、叙述した教本であった。
この基本動作が完成・出版されたことによって、祖国では速いスピードで舞踊の人材育成がなされ、海を越えて日本にいる在日同胞舞踊家や愛好家、学生たちまでもが朝鮮民族の感情情緒とモッ(粋)、興趣が込められた民族の舞踊を習い、踊れる道が開けたのである。
祖国ではこの基本動作を、保存し発展させて来た。そして機会あるごとに、海外にいる私たちのために資料や動画などを送り、直接伝授もしてくれた。70年代にはマンスデ芸術団の基本動作の映画を普及させ、80年代からは平壌音楽舞踊大学の基本動作を金剛山歌劇団や文芸同舞踊部、音楽舞踊通信生たちにも伝習できるように配慮してくれた。90年代には祖国の講師による日本での「朝鮮舞踊講習会」を通じて、全国の舞踊家、愛好家、学生たちにまで伝授してくれた。
2000年代に入り、ピパダ歌劇団に所属している「朝鮮民族舞踊研究所」には、「崔承喜のチュムチェ(舞体)」研究を基本とする基礎研究室が設けられた。そして、キム・ヨンギル(室長・人民俳優)、パク・リョンハㇰ(研究士)両先生をはじめ、以前舞踊研究所で踊っていた方々を招集し、07年から本格的に「朝鮮民族舞踊基本」を再演する作業が行われた。
朝鮮民族舞踊研究所研究士のパク・リョンハク先生(右)と基本動作練習後
11年11月24日、「崔承喜生誕100周年記念」の国家的行事では「朝鮮民族舞踊基本」の示範演技も公開された。
現在祖国では、この基本動作を舞踊手たちの技術習得の必修過程、鉄則としている。
13年の夏、音楽舞踊通信生と朝大生の訪問団団長として祖国に行った時、万景台学生少年宮殿の前で偶然、汗をびっしょりかいたキム・ヨンギル先生と再会した。先生は新進舞踊手たちに基本動作を教えて帰るところであった。70歳を過ぎても先生は、立ち居振る舞いなどがかっこよく、踊りもダイナミックであった。
パク・リョンハㇰ先生は、19歳で『朝鮮民族舞踊基本』の映画に中心的舞踊手として出演した。16歳の時から50年以上、毎日顔を洗うように舞踊基本動作を踊っていると話していた。優雅で美しく、繊細で柔らかく、呼吸の取り方や抑揚の付け方まで、絶え間なく努力を重ね、守り踊って来た先生に、私は幸運にもマンツーマンで学ぶことができた。日本にいても、朝鮮舞踊を学生たちに教えている教師だからこその信頼があったからだと思う。
17年度からウリハッキョの舞踊部(ソジョ)では、日本で育つ3・4世をはじめ新しい世代の気質と教育環境に合わせて、朝鮮民族舞踊基本を基に構成された在日朝鮮学生(初、中、高)たちのための基本動作(DVD)と伴奏音楽(CD)、解説書で教育を行っている。
朝鮮舞踊の特性と技法が体系的に集大成され、民族の心と息づかいまで感じられる基本動作を踊れなければ、どのような朝鮮舞踊作品も決して踊ることはできない。そのため民族教育の舞踊教育では、基本中の基本である朝鮮舞踊基本動作を重要視し、「在日朝鮮学生芸術競演大会」の舞踊部門でも基本動作の審査をするのである。
朴貞順(朝鮮大学校舞踊教育研究室室長)